fc2ブログ
昨日の続きでジェイムス・クリュスの本から、私の好きなお話です。
『クリスマスのオウム』 Der Weihnachtspapagei

papagei小

クリスマス直前のアムステルダムのお話。少女レーンチェが可愛がっていた「しゃべるオウム」が死んでしまった! レーンチェは悲しくて、病気になってしまう。やさしいお医者様のファン・デア・トーレン氏は、クリスマスまでにしゃべるオウムを探し出して、プレゼントしてあげようと約束する。しかし、しゃべるオウムを手に入れるには、嵐のドーバー海峡を船で渡って、ロンドンへ行って探すしかないのだ。誰がこの危険な仕事を引き受けてくれるだろうか?

papageiページ小

子供の本として書かれたものなので、ドイツ語は読み易いし、いかにもクリュスらしい心温まるお話です。これも残念ながら邦訳はありません。
とっても愉快なのは、船乗りのハインが事あるごとに口にする捨てぜりふで、たとえば

Potzdrecksfeinerherrmitzylindernochmal,
こりゃまたおったまげた山高帽の紳士だべ(訳は私がいま適当につけたもので、正確ではないかも知れません)

…というような、リズミカルな続き言葉がたーくさん出てきます。初めはエ~ッ、なに?と思いますが、よく見ると単語をくっつけて言っているだけ。ハインが何か言う度にこれがついてるので、そら来たっ!と解明する楽しみもあります。ドイツ語の読書にもおすすめ。


クリュスの作品で、邦訳出版されたものの中から...
下の本は「ロブスター岩礁の燈台」(森川弘子訳)。
幸せを掴むためには、少なくとも幸せのイメージを持たなければならない…という著者の信条が伝わる一冊です。
ロブスター岩礁の燈台

今日8月2日は、ジェイムス・クリュスの14回忌にあたります。
私の大好きな作家、James Krüss(1926-1997)はドイツの児童文学者で、子供達のために沢山のお話を書きました。日本ではそれほど有名ではありませんけれど、多くの作品を書いて、児童文学の世界にはっきりと足跡を残した人です。

クリュス

ドイツの児童文学といえば、ダントツに有名なのがケストナー。「ふたりのロッテ」「エーミールと探偵たち」など、今も読まれ続けているし映画にもなりました。そのケストナーに才能を見出されたのがクリュスで、「おはなし丸の船長」と呼ばれて活躍しました。上の写真を見ると、何か語りたくてたまらないお人柄がわかりますよね。

略歴を簡単にご紹介。
ヘルゴラント島(ドイツ北西部の孤島)に生まれる。はじめは教員を志していたが、ケストナーの勧めもあって児童文学者としての道を歩き始める。ケストナーの「動物会議」のラジオドラマ化に成功。ミュンヘン近郊に住み、ラジオ・テレビで放送作家として活躍する一方、次々と作品を発表。「ロブスター岩礁の燈台」「ひいじいちゃんとぼく」「笑いを売った少年」「風のうしろの幸せの島」など多くの物語のほか、絵本、放送劇、詩作など。ドイツ児童文学賞、国際アンデルセン賞、マールブルク文学賞など、多数受賞。40歳の時にスペインのグランカナリア島に家を買い、1997年に亡くなるまでそこに居住。遺灰は故郷ヘルゴラントの海にまかれたそうです。


クリュスおじさんは沢山の作品を残していて、私もごく一部しか知りません。下の写真はお気に入りの一冊で、残念ながら邦訳は出てないのですが、「ドイツ語を楽しく勉強しよう!」という気分になれる本なので、ご紹介します。

『パウリーネへの手紙』"Briefe an Pauline"

Pauline縮小

クリュスがカナリア島へ引っ越したあと、ミュンヘンに住む少女パウリーネとの、手紙のやりとりが一冊の本になっています。多分クリュス自身によると思われる挿絵が、とても楽しくて素敵です。

pauline klein


本の中で、羊飼いの男がクリュスに語る一節...
Es ist mit dem Glück eine seltsame Sache, Senor. Wer es hat, merkt es nicht. Wer es sucht, findet es nicht. Nur wer es verloren hat, merkt hinterher, dass er das Glück für einen Augenblick in seinen Händen gehalten hat.
幸せっちゅうもんはね、旦那、不思議なものでさぁ。持っていると気がつかない。探しても見つからない。それをなくしてしまった者だけが、あとになって気付くんですよ。あの時幸せだったってね。


このCDブックはクリュス自身の録音。めちゃめちゃ楽しい語りです!

CD縮小



最近読んだ本です。

duve_anstaendig.jpg



ドイツの作家カレン・デューヴ(Karen Duve)が書いた Anständig Essen…日本語では、「心正しく食べる」とか...訳がむずかしいかも。今年1月3日に、Galiani Berlin社から出版されました。ネットでたまたま見かけた紹介文がきっかけで、どうしても読んでみたいっ!と思い、購入。 副題が Ein Selbstversuch となっているように、食についての体験記です。ドイツ語としては比較的読み易いんじゃないかと思います。
カレン・デューヴは、1961年ハンブルク生まれの女流作家。現在はブランデンブルク州の田舎で、ロバ、ラバ、馬、猫、鶏たちと一緒に暮らしているそうです。裏表紙に、鶏を抱えてラバと一緒に写っている著者の写真が載っていて、ちょっと親近感。本のカバーに書かれた紹介文を訳してみました。


カレン・デューヴは、いわゆる健康マニアと呼ばれる人々とは、無縁に生きてきた。スーパーに行けば、チョコレートやコカ・コーラは勿論のこと、ソーセージもグミも買い込む。しかし、やっかいな同居人が現れた。同じ家に住むことになったその女性には、すぐに「ジミニーこおろぎ」というニックネームがつけられる。ディズニーのアニメーション映画「ピノッキオ」の中で、ピノキオの良心の役目をする、こおろぎのことである。デューヴがスーパーマーケットで、「冷凍グリルチキンセット 2,99ユーロ」をカゴに入れようとすると、ジミニーは飛んできて非難する。グリルチキンセットの鶏は、そもそも冷凍加工される以前、憂慮すべき生活を送っているのだ。デューヴ自身も、それは認めざるをえない。

こうして冷凍庫を前にして、たちどころに根本的な疑問がわき起こる。 そもそも人間は、ほかの動物を食べることが許されるのだろうか? もしも答えがノーならば、では植物はどうなのだろうか? 人間的な感情移入は、どこに始まり、どこから過剰なのか? 振り返れば私たちは、命ある生き物を犠牲にして生きている。それは当然なのだろうか?


その答えをデューヴは、是非とも知りたいと考える。そして、モラルに照らして異なる食事方法を、2ヶ月ずつ続ける試みが始まった : バイオオーガニック、 菜食(ヴェジタイズム)、 フェーガン(卵・ミルク・チーズも摂らない菜食)、 そして最後に果食(植物が自発的に提供するものだけ食べる)。 それと並行してさらに、それぞれの主義の背景となる世界観をさぐる努力をし、かたやジミニーとは論戦を繰り広げる。 体験生活を終えて、この本の出版直前に、デューヴ自身の今後の食事法と生き方について、結論が出された。



とってもとっても面白く読めました!もっと詳しく紹介している書評なども手元にあるんですけれど、ドイツ語長文なので、訳すのがなかなか難しい。 そのうちに出来たら.....