いつ読んでも楽しくて、大好きなお話『大どろぼうホッツェンプロッツ』
ドイツの児童文学者オトフリート・プロイスラー(1923~)の本です。

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何か楽しい本はないかなぁ..という時にはおすすめ!
おばあちゃんのだいじなコーヒーひきを奪った大泥棒を追って、カスパールとゼッペル、二人の少年が大活躍するお話です。
大どろぼうホッツェンプロッツ、大魔法使いペトロジリウス=ツワッケルマン、妖精アマリリス、おまわりさんのディンペルモーザー氏....登場人物を並べただけで、どこかユーモラスな感じがしますね。

そして、フランツ・ヨーゼフ・トリップの挿絵がすごくいいんです!

挿絵 小

ね! この変てこさがたまらない...

悪者を欺くためにカスパールは、すご~く頭が弱い振りをする.. そうして相手の隙をうかがって...『クラバート』に登場する「ユーロー」が、「まぬけ」を装って窮地を切り抜けるのと、通じるものがあるような気がします。こういうキャラクターの描き方がいいなぁ...何というか、読み飽きない面白さ。

作者のオトフリート・プロイスラーは、今年10月20日に88歳の誕生日を迎えるそうです。
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一冊の本が、それまで知らなかった世界の扉を開けてくれる… そこまで決定的ではないにしても、私にとってこの本は、ドイツ文学との出会いだったような気がします。

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20代の時、たまたま知り合いになったドイツ人女性に、「ドイツ語に興味があるならケストナーが楽しいわよ」と言われたのがきっかけ。紀伊国屋書店に、原書と邦訳本を買いに行きました。その頃は語学力がなくて(今だってないが、当時はもっともっとなかった!)、苦労して数ページ読んでは、ため息をついた記憶があります。文字より挿絵を眺める方が楽しかったかも(笑)


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9ページ目ですでに、今でもはっきり覚えている《箱根の関所》がありました。 この文↓

Das beste wird sein, du beißt ihr die Nase ab!
一番いいのは、(彼女の)鼻をかみ切ってやればいいのよ!


おしまいのabは、分離動詞の abbeißenである…というのはOK. 
しかし、しかし、何故「彼女の」が、3格ihrなのだ? これはミスプリではないか? ihre Naseの間違いではないのか?....と、首をひねりましたね。調べるうちに「所有の3格」というものだとわかったけれど、ピンと来ないというか、居心地の悪い気分だったのを覚えています。そういうレベルで読もうというのが無謀なことでした。

でも読み進めるうちに、いつの間にかケストナーの世界にすっかりはまってしまって、お気に入りの一冊になりました。ストーリーがいいですよね。うり二つで性格の違う双子が、互いに入れ替わって暮らす… ドイツでは2回も映画化されているし、アメリカ映画「罠にかかったパパとママ」も、美空ひばり一人二役の映画「ひばりの子守唄」も、原作はこの本なのだそうです。

好きなシーンは沢山あるけれど、とくにこの場面...
料理上手のロッテになりすましたルイーゼ(実は料理未経験)が、マカロニスープを作ろうと台所で奮闘するけれど、うまく出来ず、台所の椅子にへたばってしまう。

ルイーゼは..「こんなこと、わけないわ。」とつぶやきます。しかしお料理は特別なものです。高い塔から飛びおりるのには、決心だけで充分かもしれません。だが、肉といっしょにマカロニを煮るには、意思の力より以上のものが必要です。  (高橋健二訳 岩波少年文庫)

上の文の「こんなこと、わけないわ。」..の原文は Das wär doch gelacht!

ケストナーの描く子供たちは、本当に生き生きしていて、存在感たっぷり。時々懐かしくなって、読み返したりしています。


今読んでいる本「世界の測量」、ドイツの作家ダニエル・ケールマンの世界的ベストセラー。2005年に発表された作品です。
ネットで絶賛されていたのを見て、アマゾンで原書を取り寄せてみました… と書くといかにもスラスラ読んでいるようですね(笑) 悲しいかな、いやもう苦戦しております^^  
邦訳は「世界の測量」~ガウスとフンボルトの物語~ 三修社 瀬川祐司訳 

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これは、アレクサンダー・フォン・フンボルト(1769-1859)と、カール・フリードリヒ・ガウス(1777-1855)を主人公にした小説。フンボルトは博物学者・探検家・地理学者として世界に名をとどろかせたし、ガウスは数学者・天文学者・物理学者として大変な業績を残して、近代数学の創始者とも言われる人。二人の人生を交互に描いて、「測量」に対する考え方の違いを、ある意味ユーモラスに浮き彫りにしています。

やっと3分の1ほど読んで、まだまだ先は長い~... ちょっと果てしない気がしていますが、面白い本なので投げ出さずに終わりまで読みたいです。

ちょうどベートーヴェン(1770-1827)と同じ時代ですね。人々は馬車で移動し、書類を書く時は羽根ペンにインクをつける。電話も写真もない時代。フンボルトが南米のジャングルを、六分儀片手に突き進む様子は、痛快…というか、読んでいて気分が悪くなりそうなほど(笑)。ガウスは反対に一つ所に留まって、数学で物事を測量する。ガウス8歳の時の有名な実話も語られています(…算数の時間に1から100までの数を全部足してみろと言われて、即座に5050と答えた。1+100=101、 2+99=101、 3+98=101...つまり 101×50=5050 )

フンボルトは貴族の家に生まれて、子供の時から特別な教育を受けて育っているけれど、ガウスの父は庭師(ウィキによればレンガ職人)で、母親も普通の人。ガウスの場合は本当に「天から降ってきたような」天才だったのですね。なぜこれ程の天才がこの一家に生まれたのか不思議な感じがします。モーツァルトだって父親が音楽家で、環境は整っていたわけだし、ベートーヴェンだって教育パパがいたしね。

この本の特徴はもうひとつ、会話がすべて接続法一式で書かれていること。例えば、ガウスがカントを訪ねる場面。

Er könne sich gut vorstellen, daß viele Besucher kämen und daß man sich zu schützen habe. Aber, und das müsse er in aller Klarheit sagen, er sei nicht irgendwer.
あなたがたが身を守る必要があることも理解しております。しかし、ここで明確に申し上げねばならないのは、私がそこらへんにいる馬の骨などではないということです。(瀬川祐司訳、三修社)

原文はこういう接続法一式に満ちているので(涙)、ちょっと手に余っています。それにしても上の訳文は素晴らしい! ドイツ語を勉強していて、接続法一式の間接話法を勉強するには最適の一冊です(笑)。

8月3日の日記の続きです。
ジェイムス・クリュスの代表作『笑いを売った少年』ご存知でしょうか? 
わくわくしながら読める素晴らしい物語です!

笑いを売った少年 小


3歳で母を亡くし、12歳で父を失った逆境の少年は、どんな賭けにも勝てる力と引き替えに、誰の心をも明るくするとびきりの笑いを売ってしまう。やがて富より笑いが大切だと知った彼は、笑いを取り戻す旅に出る…。

…少年が、奪われた大切なものを取り返すために、冒険の旅をする…というストーリーは、ケストナーの「エーミールと探偵たち」と似ているかも知れませんね。こちらの物語では、盗られた物がお金ではなく、「とびきりの笑い」! いかにもクリュスらしい着想だと思います。というのは、この作品以外でもクリュスは、『笑い』=『人生でなにより大切なもの』というメッセージをたくさん残していて、その信念がいつもはっきり伝わってくるのです。この作品も、クリュスお得意の枠構造(ストーリーの中に、沢山の小ストーリーが組み込まれている)で書かれています。


出版社Oetinger Verlagの紹介文から...
Timm Thalers Lachen steckt alle an. Bis er es an den geheimnisvollen Ballon Lefuet verkauft. Beide schliessen einen Vertrag : Der Ballon erhält Timms Lachen, und Timm gewinnt ab jetzt jede Wette.
ティム・ターラーが笑うと、周りのみんなも一緒に笑わずにはいられない。その「とびきりの笑い」を彼は、正体のはっきりしないリュフェット男爵に売ってしまう。契約の内容は、男爵は笑いを手に入れ、かわりにティムは、今後どんな賭けにも勝てるようになるというものだった。

…リュフェット男爵の綴り lefuet を後ろから読むと、Teufel,つまり「悪魔」という言葉になります。少年は、男爵の仮面をつけた悪魔を相手に、知恵をしぼることになるわけです。悪魔が欲しがるほどのティムの笑いとは、「おしまいにしゃっくりの出る、お腹の底から出る笑い声」。チャーミングな冒険物語でした!
昨日の続きでジェイムス・クリュスの本から、私の好きなお話です。
『クリスマスのオウム』 Der Weihnachtspapagei

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クリスマス直前のアムステルダムのお話。少女レーンチェが可愛がっていた「しゃべるオウム」が死んでしまった! レーンチェは悲しくて、病気になってしまう。やさしいお医者様のファン・デア・トーレン氏は、クリスマスまでにしゃべるオウムを探し出して、プレゼントしてあげようと約束する。しかし、しゃべるオウムを手に入れるには、嵐のドーバー海峡を船で渡って、ロンドンへ行って探すしかないのだ。誰がこの危険な仕事を引き受けてくれるだろうか?

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子供の本として書かれたものなので、ドイツ語は読み易いし、いかにもクリュスらしい心温まるお話です。これも残念ながら邦訳はありません。
とっても愉快なのは、船乗りのハインが事あるごとに口にする捨てぜりふで、たとえば

Potzdrecksfeinerherrmitzylindernochmal,
こりゃまたおったまげた山高帽の紳士だべ(訳は私がいま適当につけたもので、正確ではないかも知れません)

…というような、リズミカルな続き言葉がたーくさん出てきます。初めはエ~ッ、なに?と思いますが、よく見ると単語をくっつけて言っているだけ。ハインが何か言う度にこれがついてるので、そら来たっ!と解明する楽しみもあります。ドイツ語の読書にもおすすめ。


クリュスの作品で、邦訳出版されたものの中から...
下の本は「ロブスター岩礁の燈台」(森川弘子訳)。
幸せを掴むためには、少なくとも幸せのイメージを持たなければならない…という著者の信条が伝わる一冊です。
ロブスター岩礁の燈台