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2011.09.24
渡り鳥…エアバスより高く遠く
いつか読もうと思ってパソコンに保存しておいた、渡り鳥についての新聞記事が出てきました。
2008年3月ヴェルト・オンラインの記事 『渡り鳥…エアバスより高く遠く』です。
ドイツ語原文は こちら

渡り鳥についての最新10大ニュース
1.飛びながら眠る
ヨーロッパアマツバメはサハラ砂漠からドイツまで、ノンストップで飛行する。華奢な体格のアマツバメたちは、風洞実験をすればわかるように、飛行中に睡眠をとっている。「家禽のニワトリが、いつでも敵に気付けるように、脳の半分ずつを交代で眠らせることは知られています。アマツバメもそのように眠っているだろうと推測できます。」と、マックスプランク鳥類学・海洋微生物研究所のニールス・ラッテンボルク研究員は語る。長距離を飛ぶ渡り鳥はこの方法で、陸に降りることなく眠ることが出来る。
2. 大空のリリエンタール(*1)
オオソリハシシギほど長距離をノンストップで飛ぶ鳥は、ほかにいない。ラドルフツェル鳥類観察所のベルント・ライスラー氏によると、この鳥はタスマニアから北シベリアまで、なんと1万kmを約100時間で飛行する。さらにキョクアジサシは、途中で休憩をとるものの、さらに遠くまで毎年30000~50000kmもの距離を移動する。これは地球の周囲約40000kmにも匹敵する距離である。キョクアジサシが25年ほど生きることから考えると、彼らは生涯に100万km以上も飛ぶことになる。
オオソリハシシギ ↓

3. エアバスより高く飛ぶ
さらに鳥達の飛行高度にも驚かされる。ヨーロッパアマツバメは3000m、雁は9000m。計測された範囲で高さのレコードを持つのは渡り鳥ではなく、アフリカに住むハゲタカで、11300m。この高さは長距離飛行中の旅客機と同じである。
写真は日本のアマツバメ ↓

4. ハチクイがドイツで繁殖
多くの渡り鳥は気候変動の影響で、移動行動を変化させている。例をあげれば、ナキマシコ(アトリ科の鳥)などのアフリカに住む鳥は、繁殖地を南スペインまで拡げている。色鮮やかに輝く羽を持つハチクイは、もともと地中海沿岸の鳥だが、温暖化の影響で南ドイツのカイザーシュトゥールまで繁殖地が拡がっている。自然保護団体NABUの鳥類学者マーカス・ニプコウ氏によれば、南ドイツですでに約200つがいが確認されているそうである。
5. 渡りをやめる鳥も多い
冬にも餌がとれるという理由で、ドイツから南方への渡りをやめてしまった鳥達も多くいる。
11月にあちこちで見かけるツグミクロウタドリやムクドリホシムクドリは、数年前まで南フランスで冬を越していた。
(9/25追記 野鳥の邦訳名が誤っていたことを、鳥に詳しい方に教えて頂き訂正しました。割合ポピュラーな名前の鳥も、ヨーロッパと日本では別の鳥を指すことがあるそうなのです! 下2枚の写真は、文中の鳥に合致するように訂正いたしました。「野鳥散歩」さま、本当に有難うございます! それにしても、「クロウタドリ」とは何と素敵な名前ですね。ウィキで鳴き声を聴くことが出来るんですよ。実際の鳴き声もほんとに歌のようで、魅力的でした。ホシムクドリも綺麗な鳥ですね。あのモーツァルトさんちでホシムクドリを飼っていたことがある、という記述を、どこかで見かけたことがあります。詳しいことはわかりません。どなたかご存知ですか?)

上は die Amsel クロウタドリ
下は der Star ホシムクドリ

6. 編隊飛行でエネルギー節約
渡りの時に編隊を組んで飛ぶ鳥と言えば、ドイツでまず思い浮かぶのは鶴である。よく知られているV字編隊は、エネルギー節約のため。「V字の後方を飛ぶ鶴は、前方を飛ぶ鳥から軽い揚力をもらっています。」と語るのは、鶴インフォメーションセンターのギュンター・ノーヴァルト氏。一つのV字は数家族の鶴から編成され、飛びながらお互いに鳴き交わしてコンタクトを取る。そして自転車競技選手と同じように、先導する役目を交代し合う … これが若い鶴たちのお手本となって、次の世代へと受け継がれてゆく。
7. 最速は小さい鳥
風洞テストをすると、渡り鳥の飛翔について色々なことがわかる。例えば..大型の鳥は人間が考えるよりもゆっくり飛び、小型の鳥たちは速い。小さなヨーロッパアマツバメは時速160kmに達するほどだが、羽ばたいて進む時はその半分ほどの速度である。カリガネの渡りは時速60kmほど。

↑ カリガネ die Zwerggans
8. ファミリーとは袂を分かつ
長いこと鳥類学者たちは、ガンの渡りルートは解明されたと考えていたが、それは誤りだった。2年前の欧州マガン調査プログラムで、19羽のマガンの背中に発信機がつけられ、衛星経由で冒険旅行のルートや迂回路についての情報が集められた。その中の、バレンツ海コルグィエール島で生きてきたガンが、突然2000kmも遠い北シベリアのタイミール半島に飛来している。何故だろうか? 家族を持たないガンたちは、子持ちのファミリーと別のルートを選ぶことで、餌をめぐる争いをエレガントに避けているのだ。
マガン↓ die Gans

9. 婦唱夫随
オスの雁は、越冬地で知り合ったメスに従って行動する。メスの出身地はさまざまなので、結果として近親交配が避けられる。
10. 鳥インフルエンザの作り話
2年前リューゲン島で死んでいた白鳥から、H5N1インフルエンザウィルスが検出された時、渡り鳥全般がウィルス拡散の原因になっていると、疑いがかけられた。ウィルスに感染しているかもしれない野鳥と、家禽の接触を避けるよう政治的判断が下された。渡り鳥たちに対する不安が過剰で、根拠に乏しいヒステリーに近いものであると、当時渡り鳥の専門家たちは批判した。病鳥がいかにして何千キロも、移動出来るというのだろう?
現在鳥類学者たちの研究を、ウィルス学が下支えしている。ウィルス広範囲拡散の真犯人はむしろ貿易であると、カリフォルニア大学の生物学研究員ロバート・ウォレス氏は結論付けている。彼の研究では、様々なウィルスの型が調べられ、ウィルス系統図が作成された。
(*1)オットー・リリエンタール(1848-1896)を指しているかと思われます。ドイツ航空界のパイオニア。グライダーの開発者。鳥の飛翔を研究し、航空学の基礎を作った人物。
…訳す作業そのものより鳥の名前を調べるのに苦労してしまいました! これは2008年の記事ですので、その後また新しい情報が書き換えられているかもしれません。それにしても、渡り鳥たちの冒険には、声援を送りたいです。
訳文なかほどの アマツバメ、オオソリハシシギ、カリガネ、マガンのスナップショットは、長崎県で野鳥観察をしていらっしゃる「野鳥散歩」様からお借りしました 綿密な野鳥観察データと、鳥たちの素敵な写真がいっぱいのHPですので、鳥好きな方にはおすすめ! こちら
2008年3月ヴェルト・オンラインの記事 『渡り鳥…エアバスより高く遠く』です。
ドイツ語原文は こちら

渡り鳥についての最新10大ニュース
1.飛びながら眠る
ヨーロッパアマツバメはサハラ砂漠からドイツまで、ノンストップで飛行する。華奢な体格のアマツバメたちは、風洞実験をすればわかるように、飛行中に睡眠をとっている。「家禽のニワトリが、いつでも敵に気付けるように、脳の半分ずつを交代で眠らせることは知られています。アマツバメもそのように眠っているだろうと推測できます。」と、マックスプランク鳥類学・海洋微生物研究所のニールス・ラッテンボルク研究員は語る。長距離を飛ぶ渡り鳥はこの方法で、陸に降りることなく眠ることが出来る。
2. 大空のリリエンタール(*1)
オオソリハシシギほど長距離をノンストップで飛ぶ鳥は、ほかにいない。ラドルフツェル鳥類観察所のベルント・ライスラー氏によると、この鳥はタスマニアから北シベリアまで、なんと1万kmを約100時間で飛行する。さらにキョクアジサシは、途中で休憩をとるものの、さらに遠くまで毎年30000~50000kmもの距離を移動する。これは地球の周囲約40000kmにも匹敵する距離である。キョクアジサシが25年ほど生きることから考えると、彼らは生涯に100万km以上も飛ぶことになる。
オオソリハシシギ ↓

3. エアバスより高く飛ぶ
さらに鳥達の飛行高度にも驚かされる。ヨーロッパアマツバメは3000m、雁は9000m。計測された範囲で高さのレコードを持つのは渡り鳥ではなく、アフリカに住むハゲタカで、11300m。この高さは長距離飛行中の旅客機と同じである。
写真は日本のアマツバメ ↓

4. ハチクイがドイツで繁殖
多くの渡り鳥は気候変動の影響で、移動行動を変化させている。例をあげれば、ナキマシコ(アトリ科の鳥)などのアフリカに住む鳥は、繁殖地を南スペインまで拡げている。色鮮やかに輝く羽を持つハチクイは、もともと地中海沿岸の鳥だが、温暖化の影響で南ドイツのカイザーシュトゥールまで繁殖地が拡がっている。自然保護団体NABUの鳥類学者マーカス・ニプコウ氏によれば、南ドイツですでに約200つがいが確認されているそうである。
5. 渡りをやめる鳥も多い
冬にも餌がとれるという理由で、ドイツから南方への渡りをやめてしまった鳥達も多くいる。
11月にあちこちで見かける
(9/25追記 野鳥の邦訳名が誤っていたことを、鳥に詳しい方に教えて頂き訂正しました。割合ポピュラーな名前の鳥も、ヨーロッパと日本では別の鳥を指すことがあるそうなのです! 下2枚の写真は、文中の鳥に合致するように訂正いたしました。「野鳥散歩」さま、本当に有難うございます! それにしても、「クロウタドリ」とは何と素敵な名前ですね。ウィキで鳴き声を聴くことが出来るんですよ。実際の鳴き声もほんとに歌のようで、魅力的でした。ホシムクドリも綺麗な鳥ですね。あのモーツァルトさんちでホシムクドリを飼っていたことがある、という記述を、どこかで見かけたことがあります。詳しいことはわかりません。どなたかご存知ですか?)

上は die Amsel クロウタドリ
下は der Star ホシムクドリ

6. 編隊飛行でエネルギー節約
渡りの時に編隊を組んで飛ぶ鳥と言えば、ドイツでまず思い浮かぶのは鶴である。よく知られているV字編隊は、エネルギー節約のため。「V字の後方を飛ぶ鶴は、前方を飛ぶ鳥から軽い揚力をもらっています。」と語るのは、鶴インフォメーションセンターのギュンター・ノーヴァルト氏。一つのV字は数家族の鶴から編成され、飛びながらお互いに鳴き交わしてコンタクトを取る。そして自転車競技選手と同じように、先導する役目を交代し合う … これが若い鶴たちのお手本となって、次の世代へと受け継がれてゆく。
7. 最速は小さい鳥
風洞テストをすると、渡り鳥の飛翔について色々なことがわかる。例えば..大型の鳥は人間が考えるよりもゆっくり飛び、小型の鳥たちは速い。小さなヨーロッパアマツバメは時速160kmに達するほどだが、羽ばたいて進む時はその半分ほどの速度である。カリガネの渡りは時速60kmほど。

↑ カリガネ die Zwerggans
8. ファミリーとは袂を分かつ
長いこと鳥類学者たちは、ガンの渡りルートは解明されたと考えていたが、それは誤りだった。2年前の欧州マガン調査プログラムで、19羽のマガンの背中に発信機がつけられ、衛星経由で冒険旅行のルートや迂回路についての情報が集められた。その中の、バレンツ海コルグィエール島で生きてきたガンが、突然2000kmも遠い北シベリアのタイミール半島に飛来している。何故だろうか? 家族を持たないガンたちは、子持ちのファミリーと別のルートを選ぶことで、餌をめぐる争いをエレガントに避けているのだ。
マガン↓ die Gans

9. 婦唱夫随
オスの雁は、越冬地で知り合ったメスに従って行動する。メスの出身地はさまざまなので、結果として近親交配が避けられる。
10. 鳥インフルエンザの作り話
2年前リューゲン島で死んでいた白鳥から、H5N1インフルエンザウィルスが検出された時、渡り鳥全般がウィルス拡散の原因になっていると、疑いがかけられた。ウィルスに感染しているかもしれない野鳥と、家禽の接触を避けるよう政治的判断が下された。渡り鳥たちに対する不安が過剰で、根拠に乏しいヒステリーに近いものであると、当時渡り鳥の専門家たちは批判した。病鳥がいかにして何千キロも、移動出来るというのだろう?
現在鳥類学者たちの研究を、ウィルス学が下支えしている。ウィルス広範囲拡散の真犯人はむしろ貿易であると、カリフォルニア大学の生物学研究員ロバート・ウォレス氏は結論付けている。彼の研究では、様々なウィルスの型が調べられ、ウィルス系統図が作成された。
(*1)オットー・リリエンタール(1848-1896)を指しているかと思われます。ドイツ航空界のパイオニア。グライダーの開発者。鳥の飛翔を研究し、航空学の基礎を作った人物。
…訳す作業そのものより鳥の名前を調べるのに苦労してしまいました! これは2008年の記事ですので、その後また新しい情報が書き換えられているかもしれません。それにしても、渡り鳥たちの冒険には、声援を送りたいです。
訳文なかほどの アマツバメ、オオソリハシシギ、カリガネ、マガンのスナップショットは、長崎県で野鳥観察をしていらっしゃる「野鳥散歩」様からお借りしました 綿密な野鳥観察データと、鳥たちの素敵な写真がいっぱいのHPですので、鳥好きな方にはおすすめ! こちら
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