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2015.04.15 職業訓練生
今日はドイツの職業訓練の現場から。
ドイツの職業訓練システムは日本とかなり違っていまして、就職にあたり「職業訓練を修了していること」が大前提です。大学を卒業していきなり就職…とはいかないらしいです。

職業訓練生のことをAzubi(アツービ)と言って、この人たちは例えばAzubiを募集している企業や商店で週2~3日実習をしながら、さらに週何日かは職業学校に通って理論を学ぶ。2~3年間は研修と職業学校の両方に通うわけです。
そして修了試験に合格してはじめて、正式な職業人の仲間入りです。

Azubiの職種は、たとえば
Buerokaufmann/frau 事務員
Kufmann/frau im Einzellhandel 小売業
Baugeraetefuehrer/in 建築機械操作技師 などなど、あらゆる業種にわたっています。

企業は将来の社員候補であるAzubiを募集し、職につきたい人が応募する…..両者の数が一致していれば問題ないわけですが…..
今日の翻訳は、手工業のAzubiさんのお話、2014年7月15日のヴェルト紙から抄訳です。 以下訳文


ユリア・ダーメンは計測器の先端を、慎重に指輪の隙間に押し当てる。宝石をぴったりはめ込むために、わずかな狂いも許されない……
彼女は、ノートライン=ヴェストファーレン州全体で210名いる金細工師の職業訓練生のひとりである。金細工マイスターである父親の工房で、職業訓練をしている。ユリアがこの仕事を選んだのは、父親の影響ばかりではない。「金細工は楽しくて創造的な仕事です。自分の才能を発展させることができます」とユリアは言う。
goldschmiede2.jpg金細工師の仕事場

金細工師になるには、習得するべき科目がもうひとつある。それは「宝飾デザイン」。ユリアもこれからその勉強(職業訓練校での勉学)を始める予定である。

ユリアの父親ダーメン氏の工房はデュッセルドルフにある。「金細工師は最も古くからある職業のひとつです。しかも常に時代の先を行き、トレンドを読むことが求められる仕事です」とダーメン氏は言う。
彼の工房ではこれまで常にAzubiを受け入れてきたが、宝飾品市場が縮小しつつある状況の今、育て上げた人を雇い続ける仕事量はない。「宝飾品がもてはやされる時代は過ぎました。現代の若い人たちは、宝飾品よりもスマートフォンやタブレットコンピューターにお金を使うようになりましたから」とダーメン氏は語る。

ドイツ手工業組合によれば、人気の職種、例えば自動車関連のようなクリエイティブな仕事にはAzubi志願者が多く集まる一方で、ポジションに空きが目立つ職業もある。パン焼き職人や建築関係、屋根ふき職人や衛生設備関連の仕事は、Azubiの枠が埋まらない状態が続いている。

手工業の中でもちょっと変わり種の「パイプオルガン製作業」に目を向けてみよう。
20歳のヤコブ・ランゲは、ボンにある パイプオルガン製作Klais社 のAzubi 3年目である。
工房のチームの一員として、近々スペインのパイプオルガン修復作業に加わる予定だ。作業は3か月。海外での仕事は彼にとって何よりも嬉しい時間である。
orgelbauer500.jpg
(仕事中のランゲくん)

パイプオルガン製作は人気の職種で、Klais社だけで2014年秋に14名の新人Azubiを迎える。ノートライン=ヴェストファーレン州全体では、さらに17名の訓練生がいる。
hammelburg.jpg (ハンメルブルクの教会、クライス社製)

工房長のカレンバウアー氏は言う。「パイプオルガン製作は、家具職人、機械工、電気技師の仕事をひとまとめにしたようなものです。多くの訓練生は美しい響きにあこがれてこの道に入ってきます。でもたいへんなハードワークが待っていることに、あとになって気づくのです」。
神奈川県民ホール300 
(神奈川県民ホールのパイプオルガン、クライス社製)

このKlais社では、年間3~5台のパイプオルガンを製作して世界各地へ設置する。次回は中国。
名立たる工房ではあるが、ここで修業し修了試験を終えたオルガン製作者らの多くは、仕事場を求めて海外へ出ていく。ドイツ国内の需要はそれほど多くないからだ。「地球上のさまざまな土地へ出かけて、美しい空間を創造する…この仕事は、そういうチャンスを若い人たちに提供しているのです」と工房長は語る。

翻訳おわり
klais社のHPを覗いてみたら、なるほど機械工+家具職人+電気技師かもと思える写真がたくさん載っていました。
日本でも神奈川県民ホール(パイプ数2024本)や京都コンサートホール(7155本!)など、多くがクライス社のものです。とても興味深い内容なので、またいつか楽器製作の文を翻訳してみようと思います。
長い記事、お読み下さって有難うございました!
もと記事(ドイツ語)は こちら
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