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果実酢のおはなし翻訳、前回のつづきです。

「ワインのこととなると、みな毎年出来が良いとか悪いとか話題にしますね。でもほかの作物が話題になることはありません。残念なことです。リンゴやラズベリーやキュウリはどうせ豊作に決まってる…とでも思うのでしょうか。消費者は、大企業が大量生産する安い食品が当たり前と考えるようになってしまいます」。 

ゲーゲンバウアー氏の言葉の裏には、自身の経験が隠されている。実は1980年代、つまり彼の父親の代に、一家は従業員を600名も抱える大企業として、酢漬けキュウリを大量生産していたのだ。経営学を学んだエルヴィンは、チェーン店の買い付け担当者との交渉役だった。「彼らはまるでハイエナのようでした。とにかく安く作れとゴリ押ししてくるのです。生産者たちはみな、より安い原材料を使うようになります。そうして消費者の舌は安い原料に慣らされ、規格化されてゆくのです」。

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         (ゲーゲンバウアーの直売所、ウィーンの市場内)

1992年、先代の酢漬けキュウリ企業を売却、小さな酢造所が新たなスタートを切る。現在ここウィーンの醸造所で作られる酢は、250ccのビンが12~55ユーロ、貴重種の100ccビンが100ユーロほどで販売されている。

見学コースの最後は酢の味見タイムだ。ゲーゲンバウアー氏みずからピペットで、参加者の舌下に数滴の酢をたらす。アスパラガス酢は…..口の中にアスパラガスの香りが広がる。次はトマト、メロン… 参加者の笑顔が返ってくる。

30年前までドイツで酢と言えばワインビネガーなど、ほんの数種類のみだった。そこへイタリアからバルサミコ酢の波が来る。「バルサミコ」の商品名は保護されていないので、スーパーで大量に売られるようになったが、これらは安いワインビネガーとモスト(軽く発酵させたブドウ果汁)とカラメル色素を混ぜたものである。
本物のバルサミコ酢Aceto Balsamico Tradizionale(略してABT)は、醸造に最低でも12年必要で、生産者協会の統制下にあり、1リットル200ユーロ以下で手に入れることは出来ない。

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  (イタリアのバルサミコ醸造所)

現在の果実酢・野菜酢ブームは、贅沢な食通達のみ知る味が一般家庭へと広まったものである。本物をスーパーマーケットで安く買うことはできないのだ。

酢のお話。翻訳はあと少し次回に繰り越します。
お読み下さってありがとうございます。
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2015.12.18 果実酢
師走の日々は忙しく、更新も滞って、もうブログの世界では忘れられつつありますが…
ぴんぷす翻訳、細々と続けて行きますので、たま~にのぞいてやって下さいませ。

今日は世界一の果実酢・野菜酢の話です。
大変に奥の深い世界らしいですよ。

「酢の法王」と呼ばれる人の醸造所がオーストリアのウィーンにあります。上質の酢とはどんなものか…南ドイツ新聞の記事、翻訳です。
ちょっと長めですが、なかなか面白い内容です。私の勝手で省略したりせず、前編・後編、二回に分けてほぼ全訳しようと思います。(もしかすると3回に分けるかも)...
以下翻訳です。

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              (果実酢も野菜酢も最低3年かけて作られる)

『酸っぱいだけでは駄目です』 (南ドイツ新聞26.6.2015)

ここはウィーンにあるエルヴィン・ゲーゲンバウアー氏の酢醸造所。薄暗い地下室の棚には、風船のような形のガラス容器がずらりと並ぶ。中の液体は、深い赤、カラメル色、蜂蜜色などさまざま。一番奥の棚を背に立っているのは、醸造酢の世界で知らぬ人のいないエルヴィン・ゲーゲンバウアー氏、その人である。「良い酢とはどんなもの?」という質問に、軽いウィーンなまりで応えるゲーゲンバウアー氏の声が、地下室に響く。「酢は酸っぱいものと思われていますが、そうではありません。甘さと酸味のバランスこそが大切で、添加物もトリックも必要ありません。芸術品であり、スーパーマーケットでは手に入らぬものです」

例えば大都市ミュンヘンのスーパーマーケットで、酢売場をのぞいてみると、酢の世界が大きな市場であることがわかる。24品目、バルサミコからブランデー酢、洋ナシからバジリコ酢まで、ビンの形も色もさまざまなものが並び、その多様さはオイル類をしのぐ。値段もピンからキリまで、まさにより取り見取りだ。

ドイツではここ数年、食品から禁止添加物が検出される事件が大きなニュースとなった。バルサミコ酢から色素や糖類、気味の悪い残留物が見つかったスキャンダルは、その一例にすぎない。酢は、年月をかけてバクテリアの力を借りて作られるものであり、大量生産するには工業的トリックがあって当然なのである。

では上質の酢とはどんなものか…という問いをたどると、いずれ誰もが行きつくのがエルヴィン・ゲーゲンバウアー氏と彼の醸造所である。彼は国際的な料理専門誌やグルメ業界で『酢の法王』と呼ばれ、東京やニューヨークなど世界のトップシェフらが、彼の酢を料理やデザートに使用している。
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従業員10人ばかりの醸造所で作られる酢は、全部で70種類。ゲーゲンバウアー一家は同じ建物の二階に住み、昼夜を問わず3時間ごとに発酵状態を見るという献身的な生活が続く。また毎週行われる見学会ではゲーゲンバウアー氏みずからが説明役となって「酢の世界」を案内する。

アップルバルサム、 キイチゴ、メロン、サフラン、レモングラス、完熟ブドウ… 低温殺菌もフィルタリングもしていない。年間どれだけの酢を販売している?…ゲーゲンバウアー氏は手を横に振って答える。「すみませんが、数字には興味がないんです。質の良い酢は大量生産できません。」

つづく
もと記事(ドイツ語)は こちら
2015.12.02 ボルシチ
ビーツシリーズ最終回です(^^)

じつは、と言うかやっぱりと言うか、友人のひとりが
「ビーツもボルシチも、見たことない」 って言うのですよ。

それで今日は、『うち流』のボルシチをご紹介です。

今日の材料は
玉ねぎ、人参ビーツ、ジャガイモ …サイコロ状にカット、ジャガイモは皮付きのままでよい
トマトペースト(ケチャップで代用可)、コンソメ2個
たまたま冷蔵庫にあった黄色パプリカ… ほかの野菜と同じようにカット
写真には入ってませんが、キャベツざく切り も入れました。

ボルシチ1

鶏肉 (肉は豚でも牛でも何でもよい。なくてもよい)
これは100g 50円の手羽中
ボルシチ3

ビーツはこんな具合にカットしておく (まっ赤だからエプロンしてね)
ボルシチ4


玉ねぎと人参をサラダ油でいためる
玉ねぎが柔らかくなったら、肉、ビーツ、その他野菜と、
かぶるくらいの水、固形コンソメ、トマトペーストをどーんと投入。
ボルシチ5

ぐつぐつ煮るだけ。
味付けはシンプルに、塩・黒胡椒・ケチャップ・しょうゆ少々

うちでは完成少し前に、オートミールをコップ半分くらい入れました。
これは食物繊維のため。「たかきび」なんかを入れることもあります。
別に入れなくてもOK
ボルシチ6

完成 
ボルシチ7
私はスープと煮物の中間のような「もたっ」とした感じが好きなので、水分少な目に仕上げました。水分量はお好みで.....
ビーツ自体に甘味があるので、砂糖などは一切入れません。
疲れがとれる温かいボルシチの出来上がりです!



2015.12.01 ビーツの栄養
先日ビーツのことを書きました。
栄養豊富な根菜ですが、東京近辺ではほとんど見かけません。
でも多分ヨーロッパでは普通の野菜のはず。そこでドイツの健康情報サイトをのぞいてみました。するとやはり、てんこ盛りの情報が!
一部分だけですが、翻訳してみました。
以下訳文

ビーツに含まれるベタイン (植物が持つ天然由来の成分)は、肝臓の働きを促進し、さらに胆嚢や胆管の機能を高め、すこやかに保つ作用があります。
また、消化を助けたり、代謝によって発生する副産物や毒素を排出させる効果もあります。

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ベタインには、ホモシステイン(血液に含まれる必須アミノ酸で、毒性を持つ)の値を下げる働きがあります。これによって血栓症や心筋梗塞のリスクを減らすことができます。
またビーツには葉酸が多く含まれており、料理やジュースで規則的に摂取すると、心筋梗塞や脳卒中の予防につながると考えられています。

ビーツに含まれるベタインは、「幸せのホルモン」と呼ばれるセロトニン値を高めることから、気分を明るくする効果を持っています。もちろん薬剤(たとえば興奮剤や抗鬱剤)ではありませんから、効果は限られたものです。

翻訳おわり
なかなか良い野菜じゃないですか、ビーツは!
もちろん所詮はヤサイですからね、効能を信じるのはホドホドにするのがよいと思いますが、面白い野菜ですよ。町では見かけないのが残念です。

もとのドイツ語文は こちら 健康情報サイトZentrum der gesundheit