fc2ブログ
今日はひさびさに、堅~い内容の翻訳文です。

先日スウェーデンの野生動物公園で、飼育員さんがオオカミに殺されるという痛ましいことが起きました。この動物園には「オオカミの檻の中に入ることが出来る」というプログラムがあって、飼育員さんはこの群れをずっと世話してきた人だそうです。
餌をやりに檻に入った時に襲われて、目撃者もなく、なぜこんなことになったのかは不明。専門家のコメントでは、うっかり挑発するような行動をしてしまったのではないか…というように推測されています....

日本にはオオカミがいないので、さりげない報道でしたけれど、ドイツでは東端のラウジッツの森にオオカミが生息しているので、このニュースも当然、日本よりは大きく報道されているようです。
オオカミを積極的に歓迎している自然保護協会(NABU)が何か意見を言っているかなぁ...とホームページをのぞくと...やっぱり! 
『NABUステートメント』が発表されているので、つたない訳ですが書き出してみましょう。
wolf621.jpg

飼育員死亡事件(スウェーデン)についてのNABU声明

2012年6月19日 
スウェーデンのコールモーデン野生動物公園で17日、飼育員の女性がオオカミに襲われて死亡した。NABUは謹んで哀悼の意を表します。

人の手で育てられたオオカミは、既知の人間に対して、臆病さを持たない。つまり「自分たちと繋がっている人間」または「補欠のオオカミ」とみなして、友好的に受け入れもするが、逆に拒絶や攻撃の対象とする可能性も出てくる。
飼育員はオオカミの攻撃力を十分認識した上で、「囚われの身」である彼らの交際ルールに配慮して接しねばならない。
今回の死亡事故の原因が、調査によって明らかされるのを待ちたい。

オオカミという動物は生来臆病で、人間を避けるものであり、今回の事例は野生オオカミには当てはまらない。ノルウェー自然研究所(NINA)が、国際的なメンバーからなるチームで行った研究(Die NINA Studie 2002)で、「オオカミは、人を獲物と見なさない」という結論が出されている。ドイツ国内でオオカミの住む森に踏み入るにあたって、規制を設ける必要はない。
merkur online

12年前からドイツのラウジッツ地方では、人とオオカミが共存しているが、オオカミが人を襲う事例は皆無である。この事件がドイツ国内の「人とオオカミの関係」に影響を及ぼすことはない。

事件が起こったコールモーデン野生動物公園のアトラクションのひとつが、『オオカミの檻に飼育員と一緒に入ることが出来る』というものだった。NABUはこのような触れ合いには反対であり、オオカミはあくまでも野生動物として扱われるべきだと考えている。

彼らは本来ヨーロッパの自然の中に生きるものであり、動物園や野生動物公園で飼育する場合には、野生動物であることを前提に扱われるべきである。
動物園を訪れる客は、注意力と尊敬の気持ちを持ちつつ、何よりも距離をおいてオオカミを観察することが望ましい。野生動物と直接触れ合うことが、その動物のキャラクターを知ることにはならず、オオカミを縫ぐるみのように可愛がることも、するべきではない。

翻訳おわり
動物園の動物でも「尊敬の気持ちを持って見る」というのは、大事なことでしょうね。
なお上の文の続きに、現在NABUがドイツ各地で行っているプロジェクト「ツール ド ヴォルフ(狼)…対話形式の移動展示」が紹介されていました。パネルなどで、野生オオカミの生活を紹介する展示会で、フォルクスワーゲンの協賛とのことです ^^
tour de wolf klein


声明文原文(ドイツ語)は こちら
オオカミの危険性に関する研究「NINAリサーチ2002」についての訳文をお読みになりたい方は、続きを読む をクリックして下さい。
NINAリサーチ2002
オオカミが人間を攻撃する「危険ポテンシャル」はどれ程なのか…国土にオオカミのいる18ヶ国の優れた研究者が集まり、ノルウェー自然研究所NINAの委託を受けて調査に当たった。成果は2002年、「NINAリサーチ2002:オオカミの危険について」として発表された。
この研究はオオカミの「人へのアタック」について、現存する文書や情報を20世紀初めまでさかのぼって、ヨーロッパ、アジアおよび北アメリカまで広く網羅しており、このテーマにおいて広範囲にして最も信用のおける研究である。それによるとヨーロッパと北アメリカでは、オオカミに襲われる危険は非常に小さいとの結論であった。

オオカミが人を殺した例はごくまれに存在し、このようなケースはほぼすべて、狂犬病にかかったオオカミによるものだった。
1950年以降に限って見れば、ヨーロッパでのオオカミ生息数は増加しているにもかかわらず、死亡報告はごく少ない。現在の生息数は、ヨーロッパに1万5千~2万頭、ロシアに3万頭、北アメリカに6万頭とみられているが、ここ50年間の死亡事例はわずか9件にとどまっており、このうち5件は、狂犬病の個体によるものだった。アメリカではここ50年間に死亡事例は1件もなく、健康なオオカミが人を襲う例はごくわずかあるものの、そのほとんどは餌付けなどで慣らされた個体のケースか、脅すなどして挑発された場合であった。
健康なオオカミにとって人間は獲物ではないので、襲われることを心配する必要はない。
スポンサーサイト



Secret

TrackBackURL
→http://olive510.blog.fc2.com/tb.php/164-0bbacf1a