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2012.11.19
ドイツのオオカミ その5
ブログのネタが 「ローズマリー」「キャベツ」と続きましたから…
今日は「オオカミ」でいってみましょう(^^)
ドイツで約100年ほど前に絶滅したオオカミ。
近年おとなりのポーランドから入ってきた群れが定着し、徐々に増えつつあるらしい。
オオカミの存在については、現在ドイツ国内でも賛否両論あって....
下に載せたのは、「オオカミ保護協会」のロルフ・イェーガー博士のインタビュー翻訳です。
映像で何を語っているのか知りたいんだけど...というご要望があり、無謀にも「聴き取り翻訳
」に挑戦してみました......汗、汗
(聴解はけっこうムズイのです
)
冒頭の所で博士はごく短く、なぜオオカミが嫌われるようになっていったか、歴史的背景を語っています。狼男や魔女狩り、教会との関係…興味深い内容だったので、少しだけご紹介させてください。
追われた「狩猟者たち」
☆イェーガー博士、ドイツのオオカミに関して、どんなことが問題になっているのでしょうか?
Jaeger(以下J): オオカミはもともと崇拝の対象であり、われわれの友達でもありました。
しかし人間がひとつの土地に定住して開墾を始め、環境に手を入れるようになるにつれて、友達だったオオカミが、邪魔者へと変化していったのです。
中世に上流階級の人々が狩猟を行うようになると、獲物をめぐって猟師と競い合う存在、つまり「ライバル」と見なされるようになりました。
狩猟者にとっては、オオカミなどいない方が都合がよい。こうしてオオカミが殺されるようになってゆきました。
この背景にあるのは、教会の扇動による魔女狩りの一つの形ですけれど、狼男・狼女に象徴される『魔物』という解釈です。

(狼男/1722年ドイツの木版画)
(北欧神フェンリル/オオカミの姿をした巨大な怪物)
また一方では単純に「邪魔者は消せ!」という目的だけでも殺されました。
これに輪をかけたのが、オオカミをネガティブに扱う物語や、『ジェヴォーダンの獣』のように、人が襲われる話です。
(ジェヴォーダンの獣)
フランスでは、何百人もの女性がオオカミに殺されたということになっていますが、もちろん誇張されています。
このように「不安感」が、オオカミを殺す理由として広まっていきました。
☆ 子供のころ読んだ童話や寓話にも、狼男が出てきました。
J 寓話、童話、赤ずきんちゃんもそうですね。オオカミは友達ではなくライバル、不安を煽るものであり、おそろしい敵と見られるようになりました。
☆ オオカミは危険ですか?
J いいえ、絶対に違います。人間にとって危険なものではありません。
…インタビュー後半は、下の
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今日は「オオカミ」でいってみましょう(^^)
ドイツで約100年ほど前に絶滅したオオカミ。
近年おとなりのポーランドから入ってきた群れが定着し、徐々に増えつつあるらしい。
オオカミの存在については、現在ドイツ国内でも賛否両論あって....
下に載せたのは、「オオカミ保護協会」のロルフ・イェーガー博士のインタビュー翻訳です。
映像で何を語っているのか知りたいんだけど...というご要望があり、無謀にも「聴き取り翻訳



冒頭の所で博士はごく短く、なぜオオカミが嫌われるようになっていったか、歴史的背景を語っています。狼男や魔女狩り、教会との関係…興味深い内容だったので、少しだけご紹介させてください。
追われた「狩猟者たち」
☆イェーガー博士、ドイツのオオカミに関して、どんなことが問題になっているのでしょうか?
Jaeger(以下J): オオカミはもともと崇拝の対象であり、われわれの友達でもありました。
しかし人間がひとつの土地に定住して開墾を始め、環境に手を入れるようになるにつれて、友達だったオオカミが、邪魔者へと変化していったのです。
中世に上流階級の人々が狩猟を行うようになると、獲物をめぐって猟師と競い合う存在、つまり「ライバル」と見なされるようになりました。
狩猟者にとっては、オオカミなどいない方が都合がよい。こうしてオオカミが殺されるようになってゆきました。
この背景にあるのは、教会の扇動による魔女狩りの一つの形ですけれど、狼男・狼女に象徴される『魔物』という解釈です。

(狼男/1722年ドイツの木版画)

また一方では単純に「邪魔者は消せ!」という目的だけでも殺されました。
これに輪をかけたのが、オオカミをネガティブに扱う物語や、『ジェヴォーダンの獣』のように、人が襲われる話です。

フランスでは、何百人もの女性がオオカミに殺されたということになっていますが、もちろん誇張されています。
このように「不安感」が、オオカミを殺す理由として広まっていきました。
☆ 子供のころ読んだ童話や寓話にも、狼男が出てきました。
J 寓話、童話、赤ずきんちゃんもそうですね。オオカミは友達ではなくライバル、不安を煽るものであり、おそろしい敵と見られるようになりました。
☆ オオカミは危険ですか?
J いいえ、絶対に違います。人間にとって危険なものではありません。
…インタビュー後半は、下の

☆ 人間は獲物ではないのですか?
J オオカミの獲物リストに、人間は含まれていません。オオカミは何百年にもわたって人間に追われ続け、それを生き延びてきた動物です。彼ら自身が人間の獲物でした。(…)彼らにとって人間はネガティブなもの。獲物ではなく、彼らの方から避けたい存在なのです。(…)
☆ オオカミは非常に知能的な狩りをするそうですね。
J ええ、戦略的ですよ。
たとえば、私は自分の目で見たことがあるのですが、獲物の群れを追うとしますね…何頭かのオオカミが仲間から離れて、岩の影などに身を隠します。獲物の群れが近くに来ると飛び出して行って撹乱し、ちりぢりになって逃げる中からターゲットを決め、倒します。
☆ ドイツに戻ってきたオオカミは、ここで生きてゆけるでしょうか?
J 暮らしてゆけると思います。昔からここに棲み、一時は絶滅したが再び戻ってきた。満点とは言えないまでも、以前に比べれば良い。
☆ 繁殖するためのテリトリーの広さや獲物の量は十分にありますか?
J もちろんですとも。ドイツは豊かな森の国ですから、獲物もたくさんあります。狩猟期に正式に認められている捕獲量から見ても、オオカミたちが食べてゆくには十分な量があるはずです。
☆ 羊が襲われる事件が起きて、羊飼いたちは不安を感じていますね。
J それについては成り行きを見なければなりません。家庭のペットについても、かれらはオオカミから逃げるということを知りません。無防備な羊たち…家畜については守るための対策が必要です。(…)牧羊犬は羊飼いを助ける目的を持つ犬で、羊を安全な方向へ誘導します。羊たちは、牧羊犬の友達であり仲間なのです。犬は仲間を守るためなら、相手がオオカミだろうが山猫だろうが、追い払いますよ。
☆ 人間の存在も、オオカミを遠ざけますか?
J ええ。
☆ つまり私が森に入って行ってオオカミと出くわしたが、私が気づく前に、オオカミの方から逃げ出す…ということでしょうか?
J その通りです。
☆ そのような人目を避けた行動、オオカミの姿を視認できないことが、悪い印象を招いているのでは? 人間は、何がどこに居て何をしているか、周りのことを常に知っていたいのに、見えないけれど居るかも知れないというのは、恐ろしいと感じてしまう….
J ええ、それで神秘的とか魔物のようだとか、いらぬ想像の原因になってしまうのです。目があやしく光っているとかね。
☆ 何か魔力を持った動物….
J 魔力などありません。動物に備わる普通の能力です。人間とは違うというだけです。
☆ オオカミが、私たちの「隣人」になったのですね。
J そう、正しくとらえて、ふさわしく接するならば、とてもポジティブな隣人です。
(“Wilde Woelfe in Deutschland“ Dr.Rolf Jaeger氏へのインタビュー、聴き取り翻訳)
長いので、一部省略して載せました。
なお、もとのインタビュー映像(ドイツ語)は こちら
翻訳文は、リンクを貼らせて頂いている「森とシカtoオオカミⅡ」にも載っています。こちら
なお、狼男について宗教や神話との関係を記述している文があります。
ご興味のある方はどうぞ、 こちら
J オオカミの獲物リストに、人間は含まれていません。オオカミは何百年にもわたって人間に追われ続け、それを生き延びてきた動物です。彼ら自身が人間の獲物でした。(…)彼らにとって人間はネガティブなもの。獲物ではなく、彼らの方から避けたい存在なのです。(…)
☆ オオカミは非常に知能的な狩りをするそうですね。
J ええ、戦略的ですよ。
たとえば、私は自分の目で見たことがあるのですが、獲物の群れを追うとしますね…何頭かのオオカミが仲間から離れて、岩の影などに身を隠します。獲物の群れが近くに来ると飛び出して行って撹乱し、ちりぢりになって逃げる中からターゲットを決め、倒します。
☆ ドイツに戻ってきたオオカミは、ここで生きてゆけるでしょうか?
J 暮らしてゆけると思います。昔からここに棲み、一時は絶滅したが再び戻ってきた。満点とは言えないまでも、以前に比べれば良い。
☆ 繁殖するためのテリトリーの広さや獲物の量は十分にありますか?
J もちろんですとも。ドイツは豊かな森の国ですから、獲物もたくさんあります。狩猟期に正式に認められている捕獲量から見ても、オオカミたちが食べてゆくには十分な量があるはずです。
☆ 羊が襲われる事件が起きて、羊飼いたちは不安を感じていますね。
J それについては成り行きを見なければなりません。家庭のペットについても、かれらはオオカミから逃げるということを知りません。無防備な羊たち…家畜については守るための対策が必要です。(…)牧羊犬は羊飼いを助ける目的を持つ犬で、羊を安全な方向へ誘導します。羊たちは、牧羊犬の友達であり仲間なのです。犬は仲間を守るためなら、相手がオオカミだろうが山猫だろうが、追い払いますよ。
☆ 人間の存在も、オオカミを遠ざけますか?
J ええ。
☆ つまり私が森に入って行ってオオカミと出くわしたが、私が気づく前に、オオカミの方から逃げ出す…ということでしょうか?
J その通りです。
☆ そのような人目を避けた行動、オオカミの姿を視認できないことが、悪い印象を招いているのでは? 人間は、何がどこに居て何をしているか、周りのことを常に知っていたいのに、見えないけれど居るかも知れないというのは、恐ろしいと感じてしまう….
J ええ、それで神秘的とか魔物のようだとか、いらぬ想像の原因になってしまうのです。目があやしく光っているとかね。
☆ 何か魔力を持った動物….
J 魔力などありません。動物に備わる普通の能力です。人間とは違うというだけです。
☆ オオカミが、私たちの「隣人」になったのですね。
J そう、正しくとらえて、ふさわしく接するならば、とてもポジティブな隣人です。
(“Wilde Woelfe in Deutschland“ Dr.Rolf Jaeger氏へのインタビュー、聴き取り翻訳)
長いので、一部省略して載せました。
なお、もとのインタビュー映像(ドイツ語)は こちら
翻訳文は、リンクを貼らせて頂いている「森とシカtoオオカミⅡ」にも載っています。こちら
なお、狼男について宗教や神話との関係を記述している文があります。
ご興味のある方はどうぞ、 こちら
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オオカミとの関わりには長〜い歴史があること、ドイツの深い森や、ヨーロッパの宗教にも関係があって、翻訳していただいたのを読んでいても日本には無い考え方や習慣がちりばめられていて、「聞き取り翻訳」は、さぞやたいへんだったでしょう。
興味深いインタビューを読ませていただき、ありがとうございます。
興味深いインタビューを読ませていただき、ありがとうございます。
2012/11/20 Tue 06:29 URL [ Edit ]
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