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一冊の本が、それまで知らなかった世界の扉を開けてくれる… そこまで決定的ではないにしても、私にとってこの本は、ドイツ文学との出会いだったような気がします。

rotte klein

20代の時、たまたま知り合いになったドイツ人女性に、「ドイツ語に興味があるならケストナーが楽しいわよ」と言われたのがきっかけ。紀伊国屋書店に、原書と邦訳本を買いに行きました。その頃は語学力がなくて(今だってないが、当時はもっともっとなかった!)、苦労して数ページ読んでは、ため息をついた記憶があります。文字より挿絵を眺める方が楽しかったかも(笑)


44 klein

9ページ目ですでに、今でもはっきり覚えている《箱根の関所》がありました。 この文↓

Das beste wird sein, du beißt ihr die Nase ab!
一番いいのは、(彼女の)鼻をかみ切ってやればいいのよ!


おしまいのabは、分離動詞の abbeißenである…というのはOK. 
しかし、しかし、何故「彼女の」が、3格ihrなのだ? これはミスプリではないか? ihre Naseの間違いではないのか?....と、首をひねりましたね。調べるうちに「所有の3格」というものだとわかったけれど、ピンと来ないというか、居心地の悪い気分だったのを覚えています。そういうレベルで読もうというのが無謀なことでした。

でも読み進めるうちに、いつの間にかケストナーの世界にすっかりはまってしまって、お気に入りの一冊になりました。ストーリーがいいですよね。うり二つで性格の違う双子が、互いに入れ替わって暮らす… ドイツでは2回も映画化されているし、アメリカ映画「罠にかかったパパとママ」も、美空ひばり一人二役の映画「ひばりの子守唄」も、原作はこの本なのだそうです。

好きなシーンは沢山あるけれど、とくにこの場面...
料理上手のロッテになりすましたルイーゼ(実は料理未経験)が、マカロニスープを作ろうと台所で奮闘するけれど、うまく出来ず、台所の椅子にへたばってしまう。

ルイーゼは..「こんなこと、わけないわ。」とつぶやきます。しかしお料理は特別なものです。高い塔から飛びおりるのには、決心だけで充分かもしれません。だが、肉といっしょにマカロニを煮るには、意思の力より以上のものが必要です。  (高橋健二訳 岩波少年文庫)

上の文の「こんなこと、わけないわ。」..の原文は Das wär doch gelacht!

ケストナーの描く子供たちは、本当に生き生きしていて、存在感たっぷり。時々懐かしくなって、読み返したりしています。


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