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2020.03.23
ベニスに死す
「ベニスに死す」という小説をご存知でしょうか?
ドイツの作家トーマス・マンが1913年に発表。
のちにビスコンティ監督によって映画化されたので、映画なら見たことあるよという方も多いかもしれません。
映画版では、主人公は老作曲家という設定。(原作では著名な作家)
静養のためベネチアに滞在中、ある美少年に出会う。
「完璧な美」を体現するかのような美少年一家も同じホテルに投宿していたため、その姿を目にするたびに、老作曲家は少年に心を奪われてゆく。もちろん少年と言葉をかわすことはないが、少年は気づいている。
この美少年役がこの方、ビョルン・アンドレセン(Wikiからお借りした画像です)

おりしもベネチアにコレラが蔓延し始める。
老作曲家は疫病の蔓延する街を、少年の姿をもとめて歩き回り、ついに自らも感染する...........
この映画については以前、「同性愛」とか「プラトニックラブ」というような言葉で紹介されていたような記憶があります。
私も観たことはありまして、ふ~ん,,, という程度の感想だったような....... マーラーの音楽はやたら美しいけどね。
小説も若い頃に読んだけれど、大きな感銘はなかったのです。
ところが、ところがですよ!
じつは私が受講している上智大学社会人講座のクラスで、この原書(ドイツ語)を読んだのです。
(正直に言うと、出席は半分くらいか...💦 先生、ごめんなさい)
表面的な言葉の裏側を、先生が解説して下さる。これがですね、目からうろこでした。
同性愛でも、プラトニックラブの小説でもない!!
伏線が散りばめられ、神話の世界が引用され、主人公が「死の使いヘルメス」によって死へと導かれるまでの、一大絵巻なのであります。ひぇ~!
講義の受け売りを少しだけご紹介すると.....
冒頭部分でしつこいほどに、作家の勤勉な、身も心も文学にささげる質素にして気高い生活が描写されます。
しかし、ここに颯爽と登場するのが、『死の使いヘルメスの化身 』 =散歩の途中で見かけた異国風の旅人。
主人公アッシェンバッハを「ちょっと息抜きの旅」へといざなう(または旅の動機となる)。
ここでアッシェンバッハは、死へ向かうレールに乗ることとなる。
『死の使い、その2』…ベネチアに向かう途中で出会う洒落者の老人…将来のアッシェンバッハの姿の暗示(=老いを隠そうと化粧をするような滑稽な姿)
つぎに、『死を暗示する舟』…ベネチアに向かう際に乗る漆黒のゴンドラは、彼が近い将来入ることになる棺桶を暗示
『歯をむき出した漕ぎ手の男』…死への水先案内人ヘルメスが再び登場
そしてベネチアに到着したアッシェンバッハは、美の化身のごとき少年タッジオに遭遇.........
少年タッジオの存在によって、作家は破滅に導かれてゆく。(現実的な要因としてはコレラに感染して)
歴史的に、ヨーロッパにコレラが蔓延した事実を踏まえたストーリー。行政から疫病蔓延の勧告などありません。
早くベネチアを離れるようと、正直に作家に促した人物は、たった一人。しかし、その忠告も役に立つことはありませんでした。現代なら都市封鎖とか外出禁止とかになっているのでしょうけれど。
消毒薬の撒かれたベネチアの裏道を、タッジオの姿を追って歩くアッシェンバッハの描写には切ないものを感じてしまいます。
ちなみに、映画で美少年役を演じたアンドレセンは、音楽活動を続けて、来日したこともあるそうな。今ではほんとにお爺ちゃん^^
連日の疫病蔓延のニュースで、アッシェンバッハを思い出してしまいました。
ドイツの作家トーマス・マンが1913年に発表。
のちにビスコンティ監督によって映画化されたので、映画なら見たことあるよという方も多いかもしれません。
映画版では、主人公は老作曲家という設定。(原作では著名な作家)
静養のためベネチアに滞在中、ある美少年に出会う。
「完璧な美」を体現するかのような美少年一家も同じホテルに投宿していたため、その姿を目にするたびに、老作曲家は少年に心を奪われてゆく。もちろん少年と言葉をかわすことはないが、少年は気づいている。
この美少年役がこの方、ビョルン・アンドレセン(Wikiからお借りした画像です)

おりしもベネチアにコレラが蔓延し始める。
老作曲家は疫病の蔓延する街を、少年の姿をもとめて歩き回り、ついに自らも感染する...........
この映画については以前、「同性愛」とか「プラトニックラブ」というような言葉で紹介されていたような記憶があります。
私も観たことはありまして、ふ~ん,,, という程度の感想だったような....... マーラーの音楽はやたら美しいけどね。
小説も若い頃に読んだけれど、大きな感銘はなかったのです。
ところが、ところがですよ!
じつは私が受講している上智大学社会人講座のクラスで、この原書(ドイツ語)を読んだのです。
(正直に言うと、出席は半分くらいか...💦 先生、ごめんなさい)
表面的な言葉の裏側を、先生が解説して下さる。これがですね、目からうろこでした。
同性愛でも、プラトニックラブの小説でもない!!
伏線が散りばめられ、神話の世界が引用され、主人公が「死の使いヘルメス」によって死へと導かれるまでの、一大絵巻なのであります。ひぇ~!
講義の受け売りを少しだけご紹介すると.....
冒頭部分でしつこいほどに、作家の勤勉な、身も心も文学にささげる質素にして気高い生活が描写されます。
しかし、ここに颯爽と登場するのが、『死の使いヘルメスの化身 』 =散歩の途中で見かけた異国風の旅人。
主人公アッシェンバッハを「ちょっと息抜きの旅」へといざなう(または旅の動機となる)。
ここでアッシェンバッハは、死へ向かうレールに乗ることとなる。
『死の使い、その2』…ベネチアに向かう途中で出会う洒落者の老人…将来のアッシェンバッハの姿の暗示(=老いを隠そうと化粧をするような滑稽な姿)
つぎに、『死を暗示する舟』…ベネチアに向かう際に乗る漆黒のゴンドラは、彼が近い将来入ることになる棺桶を暗示
『歯をむき出した漕ぎ手の男』…死への水先案内人ヘルメスが再び登場
そしてベネチアに到着したアッシェンバッハは、美の化身のごとき少年タッジオに遭遇.........
少年タッジオの存在によって、作家は破滅に導かれてゆく。(現実的な要因としてはコレラに感染して)
歴史的に、ヨーロッパにコレラが蔓延した事実を踏まえたストーリー。行政から疫病蔓延の勧告などありません。
早くベネチアを離れるようと、正直に作家に促した人物は、たった一人。しかし、その忠告も役に立つことはありませんでした。現代なら都市封鎖とか外出禁止とかになっているのでしょうけれど。
消毒薬の撒かれたベネチアの裏道を、タッジオの姿を追って歩くアッシェンバッハの描写には切ないものを感じてしまいます。
ちなみに、映画で美少年役を演じたアンドレセンは、音楽活動を続けて、来日したこともあるそうな。今ではほんとにお爺ちゃん^^
連日の疫病蔓延のニュースで、アッシェンバッハを思い出してしまいました。
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ハロゲンくん
ぴんぷすさん、こんばんは
ベニスに死す、小説も映画も見たことがありません^^;。
ぴんぷすさんのダイジェストで初めて知りました(*_*)。
ベニスに死す、小説も映画も見たことがありません^^;。
ぴんぷすさんのダイジェストで初めて知りました(*_*)。
ぴんぷす
ハロゲンくん
こんにちは!
トーマス・マンはドイツの作家なので、ドイツに興味がある人は割合知っていますけれど、ちょっと独特の重さがありまして....誰でも読んで楽しいという小説ではないと思います。
私は原書を呼んだのは初めてでしたけど、とにかく文が長い! 一文が半ページの長さなんてことも多くて、難文なんです^^;
解説がないとピンとこない部分が多くて大変。(逆に、ドイツ語学習者としては、これが読めればかなりのレベルといえるかも知れません)
映画のほうは、やはりトーマス・マンの意図を映像にするのは難しいようで、なんか違うという感じ^^; レビューの評価もイマイチのようです。美少年だけは別格に美しいんですけど。
こんにちは!
トーマス・マンはドイツの作家なので、ドイツに興味がある人は割合知っていますけれど、ちょっと独特の重さがありまして....誰でも読んで楽しいという小説ではないと思います。
私は原書を呼んだのは初めてでしたけど、とにかく文が長い! 一文が半ページの長さなんてことも多くて、難文なんです^^;
解説がないとピンとこない部分が多くて大変。(逆に、ドイツ語学習者としては、これが読めればかなりのレベルといえるかも知れません)
映画のほうは、やはりトーマス・マンの意図を映像にするのは難しいようで、なんか違うという感じ^^; レビューの評価もイマイチのようです。美少年だけは別格に美しいんですけど。
2020/03/27 Fri 21:00 URL [ Edit ]
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